2009年 ゆれる柳のおしゃべり
思えば子どもの頃は臆病で、中学生になっても校内から通学路へだらりと垂れた
柳の動きにさえおびえて通っていた。
(表面的にはいつも強気なので友達にはそんなこともバレていないが)
かつては幽霊ばかり連想してしまった柳のゆらりという動きも現在はなんとも
美しいと思うばかりで、ものの見え方は様々な経験と共に変わるものだ
ということを知った。
「アイヌ」をテーマにした演劇『流光の音をたどれ』を夏の入口に上演した。
試行錯誤の末、繊細な精神世界にそっと触れるような表現に仕上がった。
それだけに散りばめたメッセージが読み取れなかったお客様もいた。
けれども心の底のひだに沿うことができたお客様は「こんな不思議な公演観たことない」
と静かな涙を流して帰られた。
大きな力は特別出演して頂いた弓野ご夫妻のトンコリとウポポだ。
アイヌの心を受け継いで育った恵子さんが唄うと、目の前に雄大な風景がゆったりと
見えてくる。それは私だけでなく、多くの人が口にしていた。
空想を誘う力は、柳の木と同じ。そういえばアイヌの儀式に欠かせないイナウ
(神様と人間を取り持つ道具)は柳の木で作られることが多いということだ。
目に見えないものを信じない人もいるけれど、人は常にいろいろと空想しながら
生きている。
人はユメと現実の間をゆらゆらと揺れながら生きているのではないかと、
改めて感じる。
これからも奥深いアイヌの世界に注目しながら人としての生き方を考える旅を
続けていくつもり・・・