2000年 カブトムシのおしゃべり
日本語は奥が深い言葉です。
などというと必ず出てくるのは「花冷え」。
桜の季節に一度寒さがぶり返すと、天気予報のアナウンサーが「こんな美しい言葉が、日本語にはあるん
ですねェ」と決まってコメントするので、来春には是非チェックしてみて下さい。
新聞などにはよく書かれる亊だけど、日常会話こそ日本語の多様さが実感できる。
特にふざけたことを口にした後にくっつけるセリフなんかは、その時代のムードを強く表していると思う。
「・・・なんちゃって。」「・・・なあんていっちゃたりして。」「・・・とかいって。」
「・・・なんてなあ。」「・・・って。」
今時ナンチャッテを言うと、古い人という証になったりもする。
大分すたれたが数年前、“半疑問形”というしゃべり方が巷にあふれた。
ミーハーな私の友人も当時、嫁姑のヘビーなハナシをこの“半疑問形”に乗せて相談してきたのだが、
細切れにしり上がりになるその言葉の波に気を取られ、なかなか集中して話を聞けなかった。
「姑が? あんたは? 長男の? 嫁? なんだから? うちの? 家風に? 会わせて?」
・・・あまりにも内容としゃべり方が合っていなかった。
やはり“半疑問形”は「カレシが?」といった軽い内容にこそピッタリのしゃべり方だったのだろう。
しゃべり方もTPOをわきまえるべきものである。
最近またそう思うのは「・・・なんで、」である。(「・・・ですんで、」という人もいるが)
「・・・なんで、」は「何で?」という意味ではなく、「・・・という亊なので、」などの短縮形らしく、
立派なビジネスマンでさえ平気で多用しているのだが、どうしても違和感を感じてならない。
さんざんかしこまった言葉遣いをした後で、急に「・・・なんで、」とくだけた言葉を使われると、中途半端
な方言がポロッと出てしまったドジな感じなのに、本人はいたって正しいという顔をしているので、余計に変
だと感じてしまう。
流行っているんだから使ってかっこいい、と思っているのか得意げだったりもするが、悪いけど、全然かっこ
悪いです。ハイ。・・・かっこ悪いのに、どんどん使う人が増えてるみたいで、ヒヤヒヤする。
それならいっそ、本当のお国言葉で「・・・ほんでもってよオ、」などとつなげてもらった方が、ビックリする
けど親しみと安心感が持てそうだ。
今はただ、ヘンテコな丁寧語「・・・なんで、」の流行が早く去って欲しいと願う日々である。