2000年 祭りばやしのおしゃべり

 今年も御輿(みこし)を担いだ。

子供の山車(だし)と歩いた後でもう間に合わないかと思いつつ、中学生時代から染め直してまで愛用している祭着に着替えて

素っ飛んでいくと御輿が終りそうになっていた。

ここが祭りのクライマックスで、皆一気に加わりたがる。

横で手拍子を打っていたら、町会に招かれている御輿の会の人が間に入れてくれて担ぐことができた。

私は町内半纏(はんてん)をはおっているからだ。(つまり町内御輿の主役というわけ)

ところが、今度は別の御輿の会の男が、腕だけ差し込みわざと私の首に当てるようにして妨害してきた。

顔を見るとニヤリと笑っている。

「町内半纏だゾ!」と言っても知らんぷりだ。

あまりにも息苦しいから一度御輿から抜けると、自分の会の女達をどんどんねじ込んでいる。

一体なんなの? と思い、もう一度入り込み、その男の腕を何度もひっペがえしたりした。

もう頭の手ぬぐいも取れて、衣装のひももほどけてボロボロな姿だが、負けてたまるか!

ラスト、御輿を持ち上げて盛り上がることもなく、予定より早く拍子木が鳴り終了してしまった。

こういうのは、「良い御輿だった」とは言えない。

 東京は高齢化で御輿の担ぎ手も少なくなり、いくつかの御輿の会に頭を下げて応援を頼まないと、町内を練り歩けないのは確かだ。

でも祭りとは、共に明るく盛り上がるものだろう。

昔から御輿にはケンカもつき物だったけど、もっとカラッと豪快だった。

人の首を締めて無言で楽しむ様な陰気な男に、わざわざ千葉から電車に乗ってまで来てもらわなくても結構だ。

「おまえのような奴は、祭りに参加する権利はない。この祭り荒らしめ。」

一本締めの間中、陰気な男をにらみ続け、その男に似あう陰気な視線をビリビリと送ってやった。

チロチロこっちを見ていた陰気な男は、仕舞いには下を向いていた。

てやんでい! うなだれる位なら、汚いことはするなってんだ。こんちくしょう!!

 

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